欲望の渦に巻き込まれ・・・

お久しぶりです。Hoi Myongです。AVTokyo 2023ではたくさんの方々に来ていただいて本当に感謝しております。ご参加ありがとうございました。

私自身、(自分で言うのもなんですが)社交的なところがあり、色んな方とお話しをさせていただく機会があります。初めてお会いする方にはビジネスマナー研修で学んだ名刺交換の技術で名刺交換をさせていただき、「もう11月なのにまだちょっと暖かいですね。来週からまた寒くなるようですよ、風邪には気をつけたいですよね」といった挨拶をひとしきり終え、お茶をいただく頃合いになると以下のような質問を受けることがあります。

  • 「いつもどういう観点で調べてらっしゃいますか?」
  • 「どういうふうにして調査のきっかけを見つけてますか?」

どういう観点でというのを一言で説明することは簡単ではありません。そこで本記事では「欲望」に焦点を当てて、あるシナリオから公開情報を元にどの点に着目すればきっかけを見つけることができるのか簡単にお話することができればと思います。

欲望がわかると何がわかる?

ところで、皆さんは欲望はありますか!?「お金持ちになって家建てたい!」とか、「全国制覇したい!」とか、なんでもいいです。そういう欲望があるのが人間です。

「欲望」がわかるとその人もしくは組織が何をしたいのかもしくはこれから何をしそうかがわかるきっかけになる可能性があります。例えば「欲しいけど高い物」があったときにお金がなければ、購入できないですがそのお金を稼ぐために通常人はバイトしたり、普通に正社員として働いたりします。

だからなんだ!という話なのですが、その欲望の見えるポイントがわかれば、どの国・組織が何をこれからやろうとしているのか?興味があるのか?などの情報を得られる可能性があります。

予備動作という単語をご存知でしょうか?予備動作とは、人間がある動作を行う直前に逆の動作を行うことを指します。例えば、ジャンプする直前に膝を少し曲げるなどの動作を指します。

先ほど例として挙げた、「欲しいものを買うためにお金を稼ぐ」という行為の中には、「欲しい物を買う(消費)」動作の前に「お金を稼ぐ(生産:お金を産む)」という全く逆の動作が発生します。これが予備動作の部分に当たります。

例えば、かの国の今後の動向を探りたい場合に、この予備動作の部分を公開情報などから得られるきっかけで知る事ができれば、今後何が起こる可能性があるのか?を考えるポイントとなる可能性が高いです。過去のニュースや経験から実際にありそうなシナリオを簡単に考えて作成してみました。

シナリオ

A国:軍事先端技術の能力開発に力を注ぐ権威主義国家 B国:炭素繊維技術の分野で世界でトップクラスの技術力を持つ企業があるA国に近い国 Cさん:A国の炭素繊維関連の研究開発を事業として営む企業に勤める会社員 Dさん:A国の党員 あなた:B国で先端技術を国外に流出しないように守る立場にある人

A国では、軍事先端技術の能力開発に力を入れており、特に最近は炭素繊維に関連した技術の開発能力を増強したい欲望がある。この分野において、海を隔ててすぐそばにあるB国の企業はこの業界のトップを走っている。A国はB国の企業が持つ技術に興味関心があるものの、両国の国際的な立場の関係から、この分野における協力は難しいと判断した。

A国の炭素繊維技術関連の企業に勤めるCさんは、DというA国の党員からの依頼を受けてB国の炭素繊維技術に関する情報の収集を頼まれた。CさんはB国に何度か行った事があり、B国の文化が好きで言葉もわかる。そのため、CさんはB国の情報を収集するのに適任であった。

Cさんは、B国の炭素繊維に関する情報の収集を目的として、B国にいる友人をつたってA国と馴染みの深い法律事務所を使いB国で会社を作った。事業目的を「新素材(炭素繊維関連技術)の研究開発事業」とした。Cさんは、B国に移住し事業を開始した。

Cさんは情報収集活動の一環として以下のような活動を行った。

  • Cさんは下手に偽名を使わずに本名で活動している。
  • 先端技術/素材関連の展示会に何度も足を運んで複数企業からパンフレットを入手
  • 展示会で名刺交換し話を聞いた。
  • 本国に持ち帰り、分析する目的でサンプルをもらえる企業を探した。
  • B国で炭素繊維関連の研究開発を行う企業の人間の名簿を作成
  • B国でよく使われているSNSにアカウントを作成し、前項で作成した名簿からコンタクト可能な人間をプロファイリング
  • プロファイリングした人間から、心理的に隙のありそうな人間がいるかどうかを調査し、コンタクト
  • B国国内からしかアクセスできないウェブサイトにアクセスし、炭素繊維関連の情報を収集

というシナリオです。あなたはB国で自分の国の技術を海外に流出させないように守る事を使命に仕事をしている調査員の立場にあります。どのようにして、A国の活動のきっかけを見つけることができると思いますか?

まず一つ目にA国が出している国としてどの方向に進むべきかを指し示す指針となる文書が公開情報で出ていないかを見るべきです。権威主義的な国家・組織であればあるほど、その指針に沿って活動する可能性が高いです。

次にきっかけとして考えられそうなのはB国に設立した会社です。この会社の登記簿から、A国に絡む情報を得る事ができる可能性があります。例えば、CさんのA国特有の名前、住所などです。事業目的が「新素材(炭素繊維関連技術)の研究開発事業」であることも、A国の国の指針に沿って活動していると推定できる項目ではないかなと思います。

状況証拠として、A国の人物と考えられるCが新素材関連の会社を設立している。これはA国の国として指し示す指針と同じであることから、先端技術の流出に関係のある人物もしくは今後行われる可能性があり注視すべき人物ではないか?という分析ができます。

例えば、日本であれば登記図書館のような名寄せができる登記情報取得サービスを利用できます。Cさんは本名で活動しているため、こういったサービスで照会できる可能性があります。

日本の会社で登記簿を取得した際に見るべきポイントとしては、会社の登記日、会社の住所、目的、代表取締役、代表取締役の住所などです。登記日からは事業目的の項目として挙げられている事項のある法律の規制前に登記されているといった観点で見る事ができることもあるかもしれません。

また、A国においてこの先どこに重きを置いて経済活動を行うか、B国がその分野においてどのような立ち位置にいるのかを分析することで、事前に今後標的になる分野の企業に所属する人間の名簿リストを作成し、標的になりそうなソーシャルメディアを事前にプロファイリングしておけば、怪しい人物がコンタクトしてきていないか?を予防策として定期的にチェックしたりできるかもしれません。

まとめ

というような感じで、「欲望」の観点から自分だったらこういうところを見るかもしれないという視点で書いてみました。欲望を紐解くことで調査のきっかけに結びつくものがわかったり、わからなかったりします。シナリオは30分くらいで適当に考えました。実際にこういうことがあるかもしれませんし、ないかもしれません。

経済産業省が出している文書が面白いので紹介します。安全保障貿易管理の概要の25ページ目に記載されている「大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの強い貨物例」をみていただけると規制されている荷物に関する情報が記載されている事がわかります。

このリストだけ見れば、ただ「規制されているから気をつけよう」という気持ちだけで終わってしまいがちですが、例えばA国のような国家の立場から見てみるとAmazonの干し芋のリストのように見えます。モノを実際にどこから入手しようか?という観点を持つことができれば、日本国内で入手可能な企業をリストアップ、公開情報から人や取引先企業から怪しい人物を調べることができます。

© 2016 - 2024 DARK MATTER / Built with Hugo / テーマ StackJimmy によって設計されています。