犯罪の助長の序章

こんにちは、Hoi myongです。またまたAdvent Calenderで記事を書かせていただくことになりました。本来であれば、数日前に記事を書いて出す予定でしたが、業務の都合上今日出すことになりました。どうぞよろしくお願い致します。

前回の記事では欲望に焦点を当てて、いかにして調査のきっかけを見つけるかを簡単なシナリオに基づいて解説させていただきました。本記事では、「犯罪の助長」に焦点を当てて記事を書きました。

助長の序章

ソーシャルメディアの普及はこれまで現実世界のみで起きていた犯罪を多種多様なものへと変化させていきました。例えば、オレオレ詐欺は特殊詐欺などの呼称へと変化したり、ピラミッド型の犯罪組織からアメーバのように流動的な犯罪組織へと変化したりと犯罪者は彼らを取り巻く環境により適応した形へと変貌を遂げてきました。

特に近年、闇バイトの募集がソーシャルメディアで横行し、多くの人々が「タタキ(強盗)」や特殊詐欺などの犯罪に巻き込まれ、多数の被害者逮捕者を産む結果になりました。

警察はこれらの闇バイト募集アカウントや、犯罪に関わるアカウントに対して警告文を送ることで、特殊詐欺や強盗などの犯罪に関与する人間を阻止しようと動いています。

警告

例えば、以下のような警告文を当該アカウントに対してリプライしています。これらの警告のメリットとしては当該アカウントに対して警告を行うことで、「見ているぞ」ということを相手に伝えることができ、心理的に抑止の効果を生み出す事ができます。

どのように警告を行うアカウントを選定しているか、あくまでも推測ですが警察側が摘発した人間から押収された端末から、その人物が見ていたアカウントを特定し、順番に送っていっているのではないかなと考えています。

では、抑止の効果とは別の側面からの視点を持ってみると、また違った側面が見えてきます。例えば、これらの警告を行う警察の公式アカウントをウォッチしておけば、闇バイトなどの募集を行うアカウントをより効率的に発見する事ができます。調査員からすれば情報収集として使えるかもしれません。その一方で犯罪者にとってもメリットがあります。

例えば、from:(任意のユーザー名)のようにTwitter/Xにおいて検索を投げると、任意のユーザー名のポストを取得する事ができます。この検索方法を使用して警告を行なっている警察のアカウントのユーザー名を検索し、警告されているアカウントをウォッチすることで闇バイトの募集を行っているアカウントをノイズ(闇バイトへと言及している関係のないポスト)なしで効果的に発見する事ができます。

闇バイトへ申し込みたいと考える人からすると、ごく一般的なOSINTのテクニックを使用して検索することでより簡単に調べられます。これらの警告は犯罪者に対して一定程度の抑止力を持ちますが、上記のように別の観点から見てみると、闇バイトのポストもしくはそのポストを行なっているアカウントを宣伝してしまっている可能性があると筆者は考えます。

また、警告を受けたアカウントの主はもし嫌になればその場でアカウントを消すなどして捨てて、別のアカウントに乗り換えれば良いだけなので、根本から犯罪を防ぐ対策になっていないのでは?と考えられます。

ただし、警告文を送ることで闇バイトの募集ツイートが消えるなどしていることからして、一定程度の効果があることは確認できます。しかし、警告を送ること自体が特殊詐欺や強盗への募集を止めるなどの解決にはなっていない可能性があることが問題だと筆者は考えています。

また、別の問題として、啓発のためのツイートが機械的に利用規約に違反していると判断され、公式アカウントが凍結されてしまうという事態も起きています。これは平時の情報発信にも大きな影響を与える可能性があります。

記事をもし読まれて関心等あれば、ぜひ一度みなさんに「警察の啓発のあり方」について考えてみてもらえると嬉しいです。

まとめ

本記事では犯罪に対する警告がかえって犯罪を助長する可能性があるのではないか?という点について、考察してみました。個人的にはこれらの警告に関してそれが本当に社会的に良い影響を与えられているのか?という点において完全な答えを持っているわけではありません。

筆者はTwitter/Xでリプライして警告するならば、それよりも沈黙を保ち粛々とアカウントの凍結を要請したり、開示請求などによる当該アカウントに対する捜査を行い続けて、その上でできるところから摘発するといった小さなところから着々と積み上げていくことが最短で行ける解決への糸口と考えています。

© 2016 - 2024 DARK MATTER / Built with Hugo / Theme Stack designed by Jimmy